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京都公演最終日!『森の直前の夜』を演じる俳優の西藤将人さん直撃取材!!

横浜公演を大成功で終わらせ、京都、そして8月には金沢での再演と続く『森の直前の夜』に取り組む、俳優の西藤将人(さいとう まさひと)さん。

今回は西藤さんのご経歴や今回の公演について、詳しくお伺いしました!

(本記事は、横浜公演前の4月28日および5月1日に電話取材させていただいた内容を元に作成しています。)

2018年「全国47都道府県ツアー」・群馬とのご縁

木田:本日はよろしくお願いいたします。最初に、「全国で公演をされた」と伺っているのですが、これはかなり驚くべきことだと思っています。

西藤:2018年10月下旬から「全国47都道府県ツアー」というのをやりました。(ぐんま演劇人会議世話人の)中村さんとのことは、他の地域でも「こんな出会いもありました」と、よく話します。

伝手の無い群馬公演(11月下旬開催)を広報してくれる人を探そうと(ネットで)調べると「ぐんま演劇人会議」って出てくるじゃないですか。そして、「ひろみ」というとおそらく女性だろうと。なのに電話番号も載っていたので、「きっと根性の座った方なんだろうな」と。だとすると、むしろ昼間に突然電話をかけた方がいいと思ったんですね。そしたらすぐ出ていただいて。最初は期日が迫っていたので「そんなに人は呼べない」という話をされましたが、集客も頑張ってくださって。話せば長くなりますが、(本番近くになって)会った時も初めて会った感覚はしない程でしたね。

木田:そんなご縁だったのですね。ただやはり全国を回るとなると、かなりの準備期間など要したのではないでしょうか?

西藤:9月の半ばから連絡し始めました。構想自体はもっと前からあったんですけど。それでツアーしながら日程を決めてましたね。

木田:すごいですね。

西藤:でもそれが良かったんだと思います。実際やっていることに説得力があったから。(連絡を受けた側にしても)「(ここに)勝手にやって来る」みたいな・笑。

木田:全国を巻き込むような大きな取り組みだと、企画や予算などもしっかり準備して臨むようなイメージですが、そうではなかったということでしょうか?

西藤:劇団で、となると難しいかもしれませんが、一人だったし、目的もはっきりしていて。次の年にまた「365日公演」をやる予定だったんですね。そこに(ツアーで出会った)全都道府県の演劇人が集まればおもしろいんじゃないかと。

中村:(ツアーをしながら日程を決めるというのは)最初からそういうつもりだった?

西藤:いえ、結果的にそうなったというだけですね。

ゆるがない作品への自信

中村:それは自分に自信がないとできない気がするんですよ。

西藤:自分には自信がなかったですけど、作品には自信がありましたね。それは僕だけの力じゃないので。

中村:なるほど。あの時は幾つの演目を持ってたんでしたっけ?

西藤:6つくらいだったと思います。そこから選んで、一つの地域では3つとかやってたと思います。

中村:それは書き下ろし?

西藤:そうですね。樋口ミユさん(Plant M)の書き下ろしですね。

中村:稽古はいつから?

西藤:ツアーの前に上演したものもありました。他には回りながら稽古したものもあったと思います。

中村:回り方自体は即興的だったけれども、作品自体はしっかり作り込んだものだったということですね。(群馬で観た時も)大きいステージでやっても見劣りしないくらいの一人芝居でしたものね。

西藤:木田さんはもしかしたら、僕のことをチャレンジャーだと思ってるかもしれないですけど。

木田;そうですね。そういう印象です。

西藤:結構皆さん、僕の経歴を見るとそう言うんですけど、割と勝算しかなかったです。当時の僕はすごく勝算を意識してました。それは劇団をやっていたので、失敗できないっていうのがすごくありましたね。

今はもう劇団もやってないですし、そういうことではないな、と思うので、俳優としての舞台の立ち方も変わったと思います。勝算とかそういうのは全く考えてないです。

「森の直前の夜」 – 演出家佐藤信さんとの裏話

木田:今回の「森の直前の夜」の演出をされる佐藤信さんとはどのような出会いだったのでしょうか?

西藤:僕のことを知ってくださっていて、創作もしたがってくれていました。それで、昨年の2月急に佐藤に会いたくなって、口にした途端に涙が出てきたんですよね。それでこれは本当に会いたいんだと。すぐに連絡をしたら「待ってます」とお返事がありました。その後、翌月頭に会えて、3時間くらいめちゃめちゃ楽しい会話をしました。その時初めてちゃんと話したんですよ。それで、その時に「これやらない?」と今回の戯曲を渡されました。

中村:佐藤さんが西藤さんに注目してたのはいつから?何がきっかけ?

西藤:実はよくわかってないんですよ。ただ、全国47都道府県ツアー時の戯曲を書いてくれた樋口ミユさんが佐藤の教え子だったんですね。それで繋げようとしてくれて。でも(最初の)365日公演の頃から知ってくれていたみたいです。少しは話題になったので。あと直接聞いたわけではないですが、僕の生き方や(演劇の)やり方が理想だと、そういう俳優がもっと増えなければいけないということをいろんなところで言ってくれてたみたいです。光栄ですよね。

木田:ここまでお話しさせていただいて、西藤さんは「感覚的に動かれている方なのかな」という印象を持ちました。佐藤さんもそういう部分を評価されたんでしょうか。

西藤:全国47都道府県ツアーやった時はものすごくロジカルな人間だったと思ってました・笑。俳優というのはロジカルでないといけないと思ってましたね。でも今は、俳優として云々は置いておいて、直感でやった方が上手くいく人間なんだと。そこに迷いはなくなりましたね。そういう意味では今はすごく直感でやってます。

木田:今そのように感じられたのは西藤さんの変化もあってのことなのでしょうか。

西藤:そうかもしれませんし、今まで(自分が)ロジカルにやっていたと思っていたところは全然ロジカルでなかったのかもしれないですね・笑。全部直感だったんじゃないかと思います。

でもそれも、佐藤に会った時に聞いたんですよ。「ロジカルなことと、感性と、俳優にはどっちが大事ですか?」って。そしたら「感性」。もう即答でしたね。その後に「強いて言えば、感性」と、もう一回言ってましたけど・笑。でも感性なんです。それは今も僕も思います。良くも悪くも東京を知らない、というのも、佐藤にとっては面白いのかもしれません。

地方で演劇を続ける秘訣-ここは負けないという自信をもつ

木田:東京を知らない、というと?

西藤:東京ならではの繋がりとか、あるじゃないですか。僕もよくわかりませんが。そういったものが全くなく、ただ「こういうものをやりたい。じゃあどうしようか。」というやり方でしかやってこなかったことが大きいと思います。

(自分が)地方を強みに思っていたのも魅力だったんじゃないですかね。

木田:西藤さんのように、「地方にいながら、全国的に活躍されている方がいる」、というのは、同じく地方で活動する演劇人にとって希望の持てるお話だと思っています。

西藤:地方の人にこそ届けたいのは「やりゃ上手くなる」ということ。やり続ければいいだけだと思います。それを割と近道しようとしているな、と思います。生意気で、勝手な印象で、しかも俳優のことしかわからないですけど、すぐ上手くなろうとしている感じがします。

木田:なるほど。確かに身の回りでも、(演技を上手くなるために)「東京に出たい」だとか「レッスンを受けたい」だとかいう話をよく聞きます。

西藤:365日公演をやろうと思ったのは、いろんな理由がありますけど、場数では誰にも負けないようにしようと思ったんですよね。365日公演をやった人って他にいないですから。そこでの経験は僕しかしてないわけですよ。その絶対的な自信をただ持ちたかったんですよ。それはなぜかというと、自信がないから。とにかく「ここは絶対負けない」という確信を持ったものを無理やり作ろうと思ったんです。それは今でも誰にも負けないものだと思ってます。

中村:西藤さんが負けてないのは「声」も、誰にも負けてませんよ。

西藤:はい。今僕の俳優としての一番の武器は、多分声です。これは、中村さんと初めて会った時(4年前)とかは絶対に認めたくなかったのですが、今ははっきり思えます。僕の一番の武器は声。もちろんトレーニングもしましたけれども、親からもらった才能ですよね。全然、親も、身の回りにも芸事は全くなかったんですが、それも良かったんだと思います。

役者はまずセリフを覚える!

中村:少し話が飛びますが、佐藤信さんとの稽古はどのような段取りでやってますか?

西藤:まずセリフを覚えることですね。セリフを叩き込むということが佐藤の稽古に入る一番最初にやることですね。

中村:稽古は5月6日からでしたっけ?

西藤:(当初、2022年公演予定が諸事情により延期となったが)12月の時に稽古はやっていています。でも佐藤が見てくれたのは3,4回だったんじゃないかな。だからがっつり一緒にやるのは6日からが初めてですね。

どうなるかわからないですけど、基本的に佐藤は一言しか言わないです。「即興的に」。もうそれしか言わないです。その人物であれば何やってもいいんだと思います。特に今回の戯曲は凄まじい台詞量だし、難解だから、ずっと綱渡りしてるような感覚です。しかもどういう風にその綱を渡っていくかもその時次第だし、その緊張感たるや、って感じです。段取りも一切ないです。

木田:そうなんですね……。そうすると台詞を覚えるのが最初の段階であり、それ以上もないように聞こえます。

西藤:「どうすれば西藤さんみたいな俳優になれますか?」みたいなことをたまに聞かれますけど、おそらく間違いないのは、僕は誰よりも台詞入れてます。とにかく自分にできることを一番やります。特別なことは何もやっていなくて、台詞をとにかく入れます。叩き込むんです。忘れても出てくるくらいに。どんな舞台でも、誰よりも早く入れます。しかも当然棒読みでね。

木田:棒読み!そこも大事なんですね。

西藤:もちろん。勝手に節とかつけてしまうと即興的にもできなくなってしまうので。それで、できるだけ自由自在な体で(稽古場に)持っていく、と。

木田:「地方だからできない」ような考えではなく、基本を積み重ねていくのが大事なんですね。

西藤:でも地方にいたから出会えた人たちもいますよ。(全国47都道府県ツアーの)『10万年トランク』を書いてくれた樋口ミユさんも、たまたまワークショップにいらっしゃって、そこで僕が目に留まった。誰にも教わってないかと言われればそうでもないですね。学校や養成所は行ってません。出会いの中で色々教わったと思います。

「森の直前の夜」 – 作品の魅力

木田;「森の直前の夜」の作品の魅力を伺えますか?

西藤:今も「これが魅力です」というのはあるにはあるのですが、言うと自分が囚われてしまうような気がして。でも強いていうのであれば、これは俳優のための戯曲であり、俳優が試されているように感じています。

「森の直前の夜」は戯曲として難解ですね。この作家の作品はどれもそうなのですが、観客に理解させる気はないのではないか、と思うほどに難しいです。でも俳優としてセリフを読むとわかってくるものがあります。一人芝居で90分なので、とにかく語ります。演劇というのは語ることしかできません。ただ、目の前に俳優がいるという圧倒的な説得力を持っています。そんな演劇の持つパワーを存分に感じることができる戯曲だと思います。

それから、年末に公開稽古をやったのですが、その時もゴール地点を設定してませんでした。完成させないのが大事だと思っています。俳優は不安だからゴールを設定しがちですが、どう見えてもいいというつもりでやりたいと思っています。

木田:なるほどです。そうすると、横浜で3回、京都で2回では回数が少ないように思います。

西藤:夏以降、金沢(8/26,27)でやって、愛媛(松山)、高知、広島、島根でもやります。この作品は10年とかのスパンで考えていますね。新しいものを生み出すのも大切だけど、演劇は贅沢な遊びだから、同じ作品を観る楽しみ方はもっとあるべきだろうと思っています。群馬でもやりたいと思ってますよ。

木田:それは楽しみですね!今日はありがとうございました。

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