天才ヒポザウルス 「三人の姉妹」稽古場取材!!
今回の記事は、足利・桐生を中心に活動している「天才ヒポザウルス」の稽古に伺い、取材をしてきました!
天才ヒポザウルス
第16回公演「三人の姉妹」
日時:①2018年11月10日(土)18:30~ ②11月11日(日)14:00~
※開場は開演の30分前
会場:桐生市有鄰館・味噌醤油蔵
桐生市本町2丁目6-32 TEL:0277-46-4144
料金:前売一般1,200円/中高生500円 ※当日は200円増
全席自由・日時指定
チケット/お問合せ
天才ヒポザウルス
【URL】http://www.geocities.jp/hippozaurus/
【E-mail】tensai_hippo@yahoo.co.jp
天才ヒポザウルスさんの16回目の公演はアントン・チェーホフ作「三人姉妹」をコメディーにした作品とのこと。
チェーホフをコメディーにする・・・どんな芝居になるのでしょうか??
代表の田沼さんのお話を聞いてみましょう。
鳴海:今回、チェーホフの「三人姉妹」をコメディーにするということで・・・。田沼さんはもともとチェーホフがお好きなのですか?
チェーホフの「三人姉妹」とは?
『三人姉妹』(さんにんしまい、露:Три сестры)は、ロシアの作家アントン・チェーホフによる戯曲。1900年に執筆され、スタニスラフスキーの演出で1901年にモスクワ芸術座にて初演。田舎町に赴任した軍人一家の三姉妹を主人公に、ロシア革命を目前とした帝政ロシア末期の知識階級の閉塞感を描いた物語。『かもめ』、『ワーニャ伯父さん』の成功により求められて執筆した作品で、のちの『桜の園』とともに「チェーホフ四大戯曲」と呼ばれる。
田沼:芝居をやっている人はチェーホフを読んでいる人が多いと思うのですけど、私もその一人で、以前から「三人姉妹」をやりたいと思っていました。うちは基本的に私がオリジナル脚本では笑ってもらえる作品を作っているので、どうせやるのであれば「三人姉妹」をモチーフにコメディーにしてしまおうと脚本を書くことから始めました。
チェーホフとコメディーの親和性 -原作を周到しつつコメディーに-
鳴海:なかなかそこが気になってしょうがないんですよ。チェーホフ作品とコメディーって離れすぎていて想像がつきにくいです。
田沼:お話はチェーホフの「三人姉妹」と同じように進んでいきます。例えば、火事が起きたりとか色んな人が部屋に出入りしたりとか、そういうシチュエーションを使っていき、3人の姉妹を主軸に話が進行します。「三人姉妹」の中で使われているセリフをなるべく残すようにして、書き加えた感じです。
鳴海:主に、書き加えたというのはどういったところでしょう?
田沼:結果的に言うと、ほとんどです。設定だけを使っているような形で、主軸の三姉妹がチェーホフの三人姉妹と似てるねっていう話の構成にしています。
鳴海:チェーホフの「三人姉妹」を読んでおいた方が楽しめますか?
田沼:そうですね! 「あのシーンのコメディーだな」とか、「あのシーンをデフォルメしているんだな」とか読んでいる人のほうが分かるかもしれません。もちろん読んでない人でもわかるようにしていますけど、「三人姉妹」を知っていると、より楽しんでもらえると思います。
鳴海:チェーホフの話は、難しいというか、ちょっとぼやっとしたまま終わるじゃないですか。
田沼:チェーホフの作品って基本的に何も起きないですからね(笑)。 実際は人が死んだり起きてるんですけど、作品的にはその辺をサラッと流しているので、ある意味何も起こらないというか。生きている人のその瞬間を切り取ったりすることが多いので、読みなれていない人だとどこで楽しんでいいかわかり辛いかもしれませんね。
鳴海:そことコメディーがどうやって合わさるのか。というのが非常に楽しみです。
田沼:本当はもっと「三人姉妹」に従順な作品にしようと思っていたのですが、うちはパロディーを使うことが多いので、そっちの色が強くなっていきました。
鳴海:では、ヒポザウルスの「三人の姉妹」では、チェーホフの「三人姉妹」とは違って色々起きるんですか?
田沼:そういう意味では何も起きないんですよ。原作と同じように大きな出来事って火事が起きるくらいで、ものすごいドラマ的な事って話しの中では起きません。その辺はなるべくチェーホフの「三人姉妹」に合わせるように作っています。
鳴海:なるほど・・・。ますます、わからなくなってきました(笑)。 こればっかりは見てみないとわからないですね。皮肉のきいた作品になるのですか?
田沼:そうですね。うちは笑いのために、話の中にネタを入れることが多いので、見る人によっては作品を冒とくしているように見えるかもしれませんね。チェーホフが好きな人からすると「ふざけるな」と怒るかも(笑)。 最後のいいシーンでは原作のセリフをほぼ使って、だけど、原作と比べると見当違いな人にそのセリフを言っているという形にしているので、その辺の所が作品を知っている人がみたら面白いと思うか、ふざけるなって思うかどっちかですね(笑)。うちのいつものやり口です。うちは、本公演とプロデュース公演を分けて上演しています。今回の本公演というのは私が脚本を書いているので、うちのカラーが全開になります。うちの評価は両極端で、「好きだ!」って言ってくれる人と「幼稚すぎ」って毛嫌いする人とに分かれます。好き嫌いはあるので、それはしょうがないかなって思ってて、あくまでもうちのカラーを貫いていくつもりです。
鳴海:なるほど。私は、そういうコメディー大好きなので、ドハマりするかもしれません(笑)。今回、桐生の有鄰館で上演されます。ここは独特な雰囲気の場所ですよね。使い方によっては芝居が負けてしまうかもしれません。
有鄰館 味噌醤油蔵 -使い手を選ぶ特殊な会場-
田沼:私は、一般貸出を始める前から有鄰館に出入りしていまして、いつもやるときは味噌醤油蔵を使うことが多いです。やはり、あの雰囲気がすごく好きです。旗揚げしたときから一般的なホールでは上演してなくて、工事現場の足場を組んで照明を釣ったりしていたので、ホールでない所でやるのは苦ではないです。ですが、下手するとあの雰囲気に負けてしまう感じがあるので、作品を選ぶだろうなと思っています。今回のはちょっと古めかしい部分があるので、作品の雰囲気にはあっているかなと思います。味噌醤油蔵でやらせてもらうときは、あの雰囲気を前提にして作品を作るので、小屋の状態を無視して作ることはないですね。
鳴海:あそこには一度やってみたいと思わせる雰囲気がありますよね。
田沼:大道具を組む時もどうやったらあの壁を有効に使えるかとか・・・。暗幕とかパネルを組むとあそこでやる意味がなくなってしまうので、今回も蔵の壁をどうやって使うかというところから考えていますね。
鳴海:今回はどういった舞台装置になっているのですか?
田沼:チェーホフは場所の変わらない、いわゆる「一幕もの」で、三人の姉妹が住んでいる部屋が舞台となっています。味噌醤油蔵の雰囲気とか壁とか柱とかを大道具のセットにどのように組み込んでいくかが頭の使いどころですね。どの向きにしたらいちばんよく見えるのか。味噌醤油蔵って味噌蔵と醤油蔵に分かれていまして、皆さんどちらか一方側を舞台として使うのですが、今回は味噌醤油蔵の境目を使おうと思っています。
鳴海:私は、ちょっと見たことがない使い方です(笑)。
田沼:現場でセットを組んでみてから変わることもあるかもしれませんが、今回はお客さんが客席に行く際に、舞台の上を通ってもらおうかなと思っています。原作だと、この家はいろんな軍人さん達が出入りしている家なので、お客さんにもソファーの横とかを通ってもらおうかなと。場合によっては家主が出てくるかもしれないし(笑)。舞台セットを組んで、無理そうだったら変わりますけどね。可能であれば、役者が舞台の袖から出てくるのと同じようにお客さんにも体験してほしいです。
鳴海:まるで登場人物になったような気分ですね。
田沼:そうですね。三人姉妹の家に訪ねてきた人みたいなイメージで客席に入ってもらうと雰囲気がでて面白いのかなと。せっかくなので小屋に入るときから色々と楽しんでもらえればと考えています。
鳴海:舞台を見る前からわくわく感がありますね。早くから客席に座っているほうが訪問者がどんどん来て、楽しいかもしれませんね。
田沼:そうですね。客席にいるとどんどん人が入って来るのを見ることになるので、三人の姉妹を知っている人だと「あれが軍人なのかな」って考えたりできますね。
鳴海:最後に、来ていただくお客さんに一言お願いいたします。
田沼:実は3年ぶりの新作なので、うちの世界が好きな人は楽しみにしていただければと。チェーホフの「三人の姉妹」と言いながら何が起きるかわからない状態になっているので、そこを楽しんでいただけたら。もちろん初めて見ていただく方も「こんなことをやっているところもあるんだな」と知っていただければ嬉しいです。もしかすると他の所だと使わない手法を使っているので、「こんなやり方もありなんだ」みたいなところも楽しんでもらえるといいのかなと思っています。
鳴海:ありがとうございます。
チェーホフ「三人姉妹」のあらすじ
独身で教師の長女オルガ、夫に幻滅を感じ結婚生活に不満を抱える次女マーシャ、人生を歩み始めたばかりの三女イリーナも現実の厳しさを知り、行く末を決めかねている。高級軍人の一家として過ごした華やかな生活も、父親を亡くしてからはすっかり寂れてしまった。厳格な父親のもと身につけた教養も低俗な田舎町では無用の長物と化し、一家の期待の星であった長男アンドレイも父親の死後はぱっとせず、姉妹が軽蔑する土地の娘と結婚して尻に敷かれている。姉妹の唯一の希望は、昔暮らしたモスクワへ帰ること。一家が最も輝いていたモスクワ時代を理想化し、夢想することだけが現実の不安を吹き払ってくれる支えになっていた。その町で姉妹が楽しく交流できるのは、父親と同じ軍人たちだけである。快活に見える彼らもまた個々の問題を抱えながらそれぞれのやり方で現実をやり過ごしている。マーシャはその中の一人と不倫し、イリーナは二人から求愛されている。真実の愛を夢見ていたイリーナだが、現状打破の手段として愛のない結婚を選択する。軍の移動が決まり、一家との別れの時を迎えたその日、イリーナの婚約者が死亡する。
・・・というように、非常に「三人姉妹」は有名な戯曲です。
多くの戯曲は、ドラマ的な出来事があり、そこに感動が生まれます。
しかし、チェーホフの作品は大きな出来事はなく、ストーリーは淡々と進み、一見すると、盛り上がりのない戯曲ですが、その中に秘められた人と人との関わりには見る人を引き付けるものがあります。
日本でも多くの劇団によって上演され、近年では乃木坂46のメンバーが起用されたりしています。
気になった方はぜひ、天才ヒポザウルスの「三人の姉妹」を見る前にチェーホフの「三人姉妹」も読んでみてください!
インタビューが終わった後、稽古を見学させていただきました。
なるほど、こういう事かと納得しつつ、爆笑していました。
あとでカメラの写真を見返したところ、写真がブレブレでほとんど使い物になりませんでした・・・。
田沼さんは見る人を選ぶとおっしゃっていましたが、私にとっては思った通り大好きなコメディーでした!
3人姉妹も面白いのですが、コメディーの要素で言うと男性陣の活躍が素晴らしいです!
劇団らん所属の山田尚史さんや若い男性陣、セリフは多くないのですが、それぞれの味が出ていてとてもよかったです。
強烈なパロディや、突然始まるダンス、ちょっとした掛け違いなど、「三人姉妹」を知らなくても十分楽しめる作品だと思います。
この記事を見て興味を持った方はぜひ、11/10.11に桐生市有鄰館へ行きましょう!
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